文化や言語の継承の危機は、村で生活する人々にとっても深刻な問題として立ちはだかっています。日本語による教育を受けた老人世代と、中国語の世界で育つ孫の世代とでは、意思疎通も自由ではありません。
そこで、近年は母語教育が重視されています。各地の教会や学校、民間の母語研究家たちによって、母語のローマ字表記が研究され、多くの母語教材が編纂されています。2000年からは週に1時間だけ、学校教育の場で「郷土言語」の時間が設けられ、原住民言語の授業が行われるようになりました。そして、2001年には、政府によって原住民言語能力認定試験も開始されました。
小川と浅井が台湾原住民の言語学研究を始めてから70年あまりが経ち、今ようやく、原住民言語は、彼ら自身の手によって記述され始めたのだといえます。
けれど、生活の場で日常言語として民族語を維持することの困難さは、やはり残されたままです。民族文化や言語の継承において、彼らの抱える課題は、決して小さなものではありません。
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珈雅瑪楽団『分享祭』
ツォウとブヌンが混住する阿里山茶山村の村人で構成される珈雅瑪(チャヤマ)楽団のCD。茶山村は、近年観光地として知られ、ツォウとブヌンの伝統的歌舞をアレンジしたパフォーマンスを観光客に披露している。 |
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