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この想像の街のいちばんはずれの奥に、ひとつだけ展示ケースがあります。そこがこの「文字の旅」の終着点になります。その使い古されてちょっと汚れてしまった白いケース の中には、パキスタンのカラチの街に落ちてた、アラビア文字の書かれた紙きれや紙くずが保管されています。世俗の世界で用事を終えた文字たちは、くしゃくしゃにまるめられ、ちぎられ、やぶられたりして、紙やプラスティックやビニールなどと一緒にごみとして捨てられます。それが文字たちにとってのこの世での「旅のおわり」です。パキスタンに限らず、街の路上ではそんなふうにして旅を終えようとしている文字たちの最後の姿を目にします。雨にぬれてふやけてしまったものもあれば、靴やタイヤにふみつけられ、泥んこになったものもあります。
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